家へ帰ろう
とりあえず、アルタも見たいし。
新宿へ向かうために携帯で路線を調べた。
新宿までは、山手線で一本だった。
そんなことも知らない自分が情けなく感じた。
辿り着いたアルタ前は、更に人が溢れていた。
色んな場所から情報が飛び交い、耳を塞ぎたくなる。
アルタのでかい画面を、口を開けたまま見上げて立ち尽くしていたら、通り過ぎていく人たちが立ち止まっている俺に容赦なくぶつかっていった。
「イッテッ」
ぶつかり通り過ぎて行く背中を睨みつけても、謝る言葉の一つもかけてこない。
ここは、立ち止まる事をしちゃいけないのか?
のんびり何かを見ることをしちゃいけないなのか?
いつまでもぶつかって行った奴の背中を見ていたら、ぶつかられたのは俺の方なのに、ぶつかって行った奴の方がよっぽど迷惑そうな顔をして振り返って行った。
「俺が悪いのかよ……」
ぼそりと零した悪態は、喧騒に紛れて消えた。
なんとなく、人波に酔った気分になり近くに設置されていた数台の自販機の前に行った。
小銭を入れ、コーラのボタンを押す。
それを手に取り、今度はぶつかられないようにずっとずっと端の方に立ちコーラを飲んだ。
炭酸に顔をしかめたまま、空を見上げたら、グレーがかかった青が自分の上に重く圧し掛かってきているように感じて苦しくなっていった。