イジワル上司に恋をして
「単純なヤツ」


「残業って、コレか……」


ショップの片づけを終えたあと、裏のプライベートルームに居残りしてるわたしは思わず口にした。

テーブルの上に、ドンと置かれたダンボール。おそらく、これがさっき黒川が運んでいたダンボールだ。
中身はいっぱいのパンフレット。その中の特殊な紙質のもののみ、手折り作業を任されたというわけで。


まぁ本当に仕事はあったんだろうけど、今日のあのタイミングでの命令とか。絶対わざとでしょ。あの性悪なら確実に!


今日の営業時間中の出来事を思い返し、ムカムカしながら少し乱暴に椅子に座る。
そのイライラをパンフを折る力に変えて、作業をし始めた。


大体この作業、ショップのレジに立ちながらでも出来たのに!まぁ、営業中に出来る数は限られてるだろうけどさ……。


一人、黙々と手を動かしていると、事務所の方からの声が聞こえる。

「今週末はチーフが担当してる、斎藤さんの婚礼ですね」
「ええ。あっという間ね。うまく行くか、今からドキドキしてる」
「えー? チーフでも緊張するんですか?」


今週末は香耶さんの担当の婚礼かぁ。
香耶さんも緊張するんだな。「ドキドキしてる」とか、チーフなのに普通に言っちゃう香耶さんが、なんか自然体で好きだな。
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