◇◇◇


カラーン…カラーン…カラーン……



目覚めた街に、朝の鐘が鳴り響く。

たっぷりと間を開け三度鳴らされ、余韻が初夏の青空に吸い込まれて行った。



その鐘の音を合図に、園舎や園庭で思い思いに遊んでいた園児達が、ぞろぞろと集まって来る。



アーチ型の門を潜った先に立つ、純白のマリア像。

その前に集まった子供達は無垢な瞳で、眩しそうに彼女を見上げる。



ヤマツツジの赤い花に囲まれる彼女は、この『聖マリア幼稚園』の象徴。



マリア像の横で、園長のシスターメリーがお祈りの言葉を唱えると、

子供達は可愛らしい声で復唱し、小さな手を組み合わせる。



それは毎朝9時に行われる、ほんの数十秒の静寂の時。



その後は…

一気に子供パワーの炸裂だ。




「麻里亜先生〜あのね〜
ゆいちゃんが意地悪した〜」



「意地悪?どんなこと?」



「あのね春菜の帽子がね、

あのね春菜の帽子のうさぎちゃんがね、

あのねえっとね、うさぎちゃんの春菜がびっくりしてね…」



(…ゴメン…全く分からん…)




「麻里亜先生ー!
絵本ビリッてなった」



「漣が破ったの?」



「違うよ。勝手に破れた」



(おい…)




「麻里亜先生、おしっこ」



「よっしゃ!梨乃ちゃん良く言えた!
急ぐよ、トイレへGO!」



「もう出ちゃったの…」



「あらら…」




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