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[side 喜一郎]



麻里亜さんが抱えている、幼稚園の問題を何とかしてあげたいと考えていた。



彼女が来店すると、この店は華やぎ賑やかになる。



しかしこの時は、お互いに考え込んでいた為、珍しく静寂の間が続いた。



ステンドグラスの菱形の色ガラスを見つめ、深い思考の中にいた。



すると振り子の掛け時計が、夕方4時の鐘を鳴らした。



その音で意識が思考の中の園児達から、彼女に引き戻される。



この鐘の音を聞く度、習慣的に彼女を意識する。

何故ならこの時計は、あの時代に彼女が使っていたその物だからだ。



店の一角には古い足踏みミシンやラジオ、蓄音機など、大正時代に最先端だった品々を並べている。



それらの殆どは、かつてマリアさんが欲しいと言っていた物だ。

勿論このステンドグラスもそう。



彼女が興味を示していた物を集めてみた訳だが、

その中でこの振り子の掛け時計だけは、実際に彼女が使用していた物だった。



この時計に出会ったのは、僕がまだ前世の記憶を眠らせたままの頃。

16歳の時だ。



当然「喜一郎」とは名乗っていない。

アルフレッドと呼ばれ、イギリスでイギリス人として極普通の生活を送っていた。



そんなある日、祖父のジェームズが興奮気味に小包を抱えて僕の部屋に飛び込んで来た。



「アル!オークションで競り落としたあの品がやっと届いたぞ!!」



祖父の趣味は骨董(コットウ)品の収集。

取り分け、東洋の古い品が好きだった。



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