私は男を見る目がないらしい。
1.好きだった男

*同窓会の席で 「俺が誰かわからない?」

 

**

お盆になり、お正月ぶりに地元に帰ってきた私は、ある居酒屋にいた。

手に持つのは、女子力の欠片も見せることができないような大きなビールジョッキだ。


「……ぷはぁ!」

「何、みお!その飲みっぷり!そんなにブッ飛ばさなくても時間はたっぷりあるんだから、ゆっくり飲もうよ~」

「いーの!飲みたいんだからっ!どうせ飲み放題なんだし、いいじゃん!」

「えー、でもせっかく8年ぶりにみんな集まったのに~!おしゃべりもしようよぉ!みお、さっきから完全に飲み役に徹してるんだもん!つまんないよー!」

「えーも~……」


ぶぅぶぅと言いながらゆさゆさと私の身体を揺すってくる友人、香代子(かよこ)に、私は仕方なく握っていたジョッキをダンッとテーブルの上に置いた。


……ゲイだということが判明した彼氏と別れてから1ヶ月。

仕事の忙しさに追われて気晴らしに飲みに行く暇のなかった私は、ここぞとばかりにビールを飲んでいた。

彼のことはもう吹っ切れたとはいえ、モヤモヤがまだ残ってるんだ。

今日は飲みまくって、モヤモヤなんか吹っ飛ばしてやるんだから!と、無駄に気合いが入りまくっていた。

 
< 6 / 278 >

この作品をシェア

pagetop