恋物語。
story.17

特別な日




―2月20日、土曜日。


今日は聡さんとのデートの日。だけど…珍しく休日出勤だということで会うのは夕方すぎから。
そして今日は…聡さんと出会ってから丸一年。つまり…今日は私の誕生日でもある。

そんな(私にとっては)“特別な日”なんだから…否が応でもワクワク、ドキドキしてしまう。
だから…美容院に行って髪の毛のセットやメイク、人生初のネイルまでやってもらった。


それもこれも…全部、聡さんのため。聡さんに少しでも…“可愛い”って思ってもらいたいから―。





――夕方5時。


待ち合わせ場所で彼の到着を待つ。

いつも仕事終わりだと必ずといっていいほど、聡さんの方が先に着いているから…
こうやって私が先に仕事終わりの聡さんを待つのは、なかなか珍しいことだったりする。



「ふぅ…」


一つ息を吐き、身に包んだコートの襟元を掴んだ。




聡さん…まだかなぁ…。って。聡さんはいつも、こんな気持ちで私のことを待っていてくれてるのかなぁ…?




「…知沙!」


そんなことを考えていた時、聴き慣れた声が私の名前を呼ぶ。



「ぁ……聡さんっ…お仕事お疲れ様です。」



「ありがとう。」


私の元へやって来た彼はフワッと笑う。


今日は黒のコートを羽織っていて、ズボンから推測するに…多分スーツだと思う。それと…私がプレゼントしたネクタイを締めていた。



「てか今日…いつもと雰囲気違うね。美容院とか行った?」



「あ…はい…」



「そっか。……可愛いよ、いつにも増して。」



「///…」


ストレートにそう言ってくれる彼の言葉に照れてしまう。



「じゃあ行こっか。ホテルのディナー…予約してあるから。」



「ぇ…」


彼はそう言い私の手を取り握る。




ホテルの…ディナー…?




いつもなら彼の行動に驚くところだけど…今日の私は、彼の発言の方に驚いた。



「ん…?どうした?」



「あ、いえ…何でもありません…」



「ふーん…」


彼はそう言うと歩き出した――。





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