恋物語。




キキ…ッ




「…セーフ、だね?」



「はい…ありがとうございます」


聡さんが車のブレーキを踏むと、その場で車は停止する。
時刻は…12時50分。私はシートベルトを外した。



「また連絡するから。」



「…はい」



「あ、そだ。うちの社まで、ちゃんと来れる?駅まで迎えに行こうか?」



「あっいえっ…!大丈夫です。ちゃんと行けます…っ」




そこまでしてもらったら逆に悪いよ…っ!




「そ?じゃあ…会社着いたら電話して?玄関まで迎えに行くよ。」



「分かりました。じゃあ私…もう行きます、ね…?」


そう言ってドアに手をかけた、その時―…、




「知沙。」



「え…?」


聡さんに名前を呼ばれて彼に振り返る。



すると―…。




「っっ…!!」


彼に唇を塞がれた――。




「///…っ」



「……行ってらっしゃい、知沙。」


彼は私に…優しく笑いかけた。





―――――――…
―――――――――…




「はぁ…」




いきなりキスするなんて…ほんと無理だからー…っっ
うぅー…顔、まだちょっと熱い気がするー…っっ




机に肘をつき両手で頬を包み込む。



「…坂井さんっ」



「え!はいっ」


名前を呼ばれて手を降ろし振り返る。



「あ…大谷(おおたに)さん。どうしました?」


そこにいたのは、アルバイトの女の子・大谷さん。



「あの、さっき2階の休憩室から見ちゃったんですけど…お昼、誰かの車に乗ってましたよね?」




ドキ…ッ!!




決定的瞬間を見られていたことを知り大きく胸が高鳴った。



「えっと、ね……」




どどど、どうしよう…っ!?でも…見られてるんだから何か言わなきゃ…。




「友達、です…」


私は頭をフル回転させて答えを導いた。



「あ、そうだったんですね~。珍しいからどうしたのかな?って思って。ありがとうございます。」


大谷さんは一礼すると自分の仕事へと戻っていった。



「ふう…」




よかったーー…。ほんとこういう時の対処法、教えてほしいよ…。





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