甘く熱いキスで

生と死

ライナーがカペル家に到着したとき、ヴォルフはすでにほとんどの家宅捜索を終えていた。

使用人はリビングへ集められ、ヴォルフの部下たちに見張られながら一様に怯えた顔をして座り込んでいる。

ヴォルフはベンノの書斎で壁や机に呪文仕掛けがないかを丁寧に確認していた。ライナーが書斎へと足を踏み入れると、ヴォルフはライナーを一瞥したが特に何も言うことなく作業を続ける。

「ヴォル――」
「無駄口を叩く前に仕事をしろ。言い訳なら元々聞くつもりはない」

低く、苛立ちを含む声で言われ、ライナーは少し怯む。だが、すぐに右の手のひらに炎を灯し、ヴォルフへと差し出した。

「ベンノ・カペルの気です。隠し空間の場所も、いくつか把握しています」

それに気づいたのは、カペル家で生活を始めてすぐのことだった。特に興味はなかったが、他人の弱みを握っておくことは後々良い手札になるかもしれないと対策を講じていたことは、実際に今、役に立つようだ。

「私が彼の気を保存できるようになったのはここ最近のこと……まだ荒削りなため、劣化が見られますし量も少ないですが、私の知っている空間を開けるには十分でしょう」

自分のものと異なる気を扱うことは、かなり難易度の高い技術だ。特に炎属性は刺激が強く攻撃的な面が大きく出る性質のため、同じ炎属性同士でも扱いは難しい。

ヴォルフや軍の専門家ならば隠し扉くらい簡単に見つけて開けることもできるのだろうが、時間短縮にはなる。

「案内しろ」
「はい」

ライナーが頷いて踵を返すと、ヴォルフはその後をついてきた。
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