青春を取り戻せ!

取調べ

車は警察署に到着した。

ついにボンの雄姿は見られなかった。

僕は取調べ室に連れて行かれ、尋問を受けたが、何一つ答えなかった。

彼らのやり方に我慢がならなかったからだ。

何を聞かれても、脅迫気味に迫られても、ガンとして口を開かなかった。

次の日も、また次の日も黙秘権を行使し続けた。

彼らの自慢気に小出しにする情報では、死んでいた女は丸山幸子、30歳、独身、住まいは僕の家からだと電車で40分程の距離にある西武池袋線沿線の東長崎のアパート。
二年前に妹が心臓病のために他界して、親族はなくなる。
仕事は昼は美容院、夜はスバルというスナックで働いていた。

ここまで聞いても心当たりはなかった。

写真も何度も見せられたが、まるっきり接触のない女だった。

刑事の、幸子さんは名前とは裏腹に、だれかさんのお陰で幸せとは程遠い人生になってしまった。かわいそうだとは思わないのかね!?などと言う、予想していたイヤミにもめげずに黙り通した。

殺害現場は倒れていたリビング、凶器は僕の使用していた刺身庖丁で、台所のゴミ箱から発見されていた。
そして遺体から抱水クロラール(睡眠薬)が検出されていた。
その一般には手に入らない抱水クロラールも、僕の研究室から出てきていた。

状況は完全に僕を犯人と差していた。

しかし僕には自信があった。

彼らの言うことには、女の死亡推定時刻は午後の九時半から十時半の間だった。
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