そんなこんなで始まったあゆみの正社員ライフは、あっという間に一週間、二週間と過ぎて行き、ついに始めての給料日を迎えていた。



給与明細に記された自分の名前、基本給。もちろん保険料もきっちり給与から差し引かれているあたり、ああ、自分は正社員だと認められているような気がする。少しでも定時を過ぎた日は残業手当もついている。サービス残業が当たり前だった初めての会社とは天と地ほどの差だ。


この二週間ほどの間にあゆみが学んだことは、宮間さんから習った資材の発注方法と、石橋さんから得意先からの電話の取り次ぎ方、浪岡さんから検査用ノギスの使い方と美味しいお茶のいれ方、小林部長の一番好きなコーヒーの、ミルクと砂糖の配分だ。



3人の神様たちの扱い方も、この二週間で少しわかってきた。


磐田さんは、どんなに難しい注文でも、「こないだのスコア、どうでした?」から会話を始めれば、すんなり引き受けてくれるし、太っちょの2号こと牛島さんは、和菓子と濃い目の緑茶を持って行けば大抵の無理な注文は引き受けてくれる。細長い3号こと鳥谷さんは、孫の話を聞けばご機嫌になり、得意の切削マシンをフル稼働させてくれる。



若い職人さんたちは、社内一美人の石橋エリカ様の鶴の一声さえあれば、どんなに無理な納期にも嫌な顔ひとつせず、連日残業で対応してくれるらしい。



小林部長の携帯電話にはいつもひっきりなしに電話がかかってくるけれど、彼はそれをマイペースに出たり出なかったりして対応する。スマホの画面の相手を見て、気分が乗らなければわざと放置して会社に直接かかって来るように仕向けることも多かった。

得意先の中でもとくに特殊で単価の高い品物や、大量生産ではない特別な注文だけはいつも小林部長に直接電話があり、その電話を聞くと大抵あゆみは走って神様たちの部屋へ向かうのだった。



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