翌朝、あゆみは鏡の前で頭を抱えていた。
ぱりっとのりの効いた白いブラウスに、濃紺で膝丈のタイトスカート、動きやすいようにヒール3センチの黒いパンプス。
事務員らしい、無難な仕事服を選んだつもりだったけれど、鏡に映った自分はあまりにも地味で味気ない印象だ。背中まである髪はクリップでハーフアップにまとめてある。生まれつき色素の薄いこげ茶色の緩いくせ毛は、毛先がふわふわとして落ち着かない。


「あの人が仕事に来るのが楽しみになるような…かぁ」


冗談を真に受けた訳ではないけれど、あんな風に言われてしまうとこんな格好で出社して大丈夫なのだろうかと悩んでしまう。

あゆみは溜め息を吐き出した。自分はこれから仕事をしに行くのだ。服装なんかで判断されてはたまらない。

とにかく真面目に仕事をしてさえいれば、服装が地味だからと解雇されるようなことはないはずだ。そう思い直してみたものの、通勤電車の車内でも、気付けば彼の言葉を思い出して不安になってしまう自分がいた。


「僕が選んだんだから」とあの人は言ったけれど、こんな何の取り柄もない自分を、どうして部長補佐なんかに選んだのだろうか。
これから、自分はあの人の下で、どんな仕事をすればいいのだろうか。

3年半のフリーター生活に、ようやく区切りをつけられたところだというのに、あゆみは早くも不安でたまらなかった。







この作品のキーワード
不器用  上司  オフィスラブ  部長  イケメン  オトナ女子  ほのぼの  ラブコメ  社長  年上