とろける恋のヴィブラート
 先方の思わぬ返事に奏は、事務所にいることを忘れてつい大きな声を出してしまった。


 一気に集まった周りの視線に、奏は申し訳なさそうに身を縮こませた。


『すみません、そのピアノのあるホール、今夜しか空いてないんですよ』


「そ、そうですか……それでは夕方にでもお伺いします」


 パーティは来週だ。万が一ピアノに不具合があれば調整してもらう必要がある。なるべくなら早いほうがいいと、奏はその日にホテルに向かうことにした――。
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