お向かいさんに恋をして
ポットをテーブルに置いたは良いものの、茫然として動けなくなった私の代わりに留奈さんがテーブルを拭いてくれた。

留奈さん、いつの間に布巾の位置を把握してたんですか?
うちに入り浸りすぎですね、さすが図々しいだけあります。
なんて、いつものようにつっこむことも出来ない。

まさか、秋中さんに婚約者が……?

って、婚約者説はハガキを見てしまった時に一瞬考えたけど……。

ましてや既婚者かも……?
だなんて……。

そ、そこまでは考えて、なかった……。

「さくらちゃん? さくらちゃん?
おーいっ」

目の前ではテーブルを拭き終えたらしい留奈さんが、私の前で手を上下に振っている。

それをぼやっと見つめていると、留奈さんの携帯が鳴った。
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