中学生の頃流行ったおまじない。

リップクリームの先にハートマークを彫って、願いを心の中で唱えながら唇に塗ると、叶っちゃうかもっていうもの。


まだ恋愛感情とかよくわからなかった私は、おまじないをする友人たちの気持ちがわからなかった。


でもね、そんなお子さまな私にも好きという感情は、あったらしい。




彼と出会ったのは、中学1年の春だった。

「片桐春馬です、中学では部活を頑張りたいと思ってます。どうぞ、よろしくお願いします」

特になんてことのない自己紹介なのに、どこか惹かれた。

……声? いや、顔? いやいや、その雰囲気、だろうか。

まっすぐな黒髪に、切れ長の目。先月まで小学生だった癖に、どこか大人びて見える。

あと、言葉遣いも、お願いしゃす、みたいな崩されてないものだったから、そのせいもあるのかもしれない。


隣の席だったから、そのまま見続けるのはあまりにも不自然で、次の人の自己紹介が始まった頃に、あわてて前を向いた。



「おい、お前」

休憩時間になると、彼から声をかけられた。

ビクッと心臓が跳ねてしまう。