Moon Light

Moon Light

私は今なぜこの場にいるのだろう。



そう。今は私の結婚式。皆がライスシャワーでお祝いしてくれる中を新郎と腕を組み寄り添い歩いている。



もう愛想笑いがかおに張り付いてしまいそれ以外の表情が今は出来そうにない。ただ無心で頭を下げているだけ。



だから隣にいる正樹(まさき)が声をかけている事にさえ気づかなかった。



「…奈。杏奈(あんな)」



「えっ…」



「大丈夫か？」



「うん。大丈夫」



愛想笑いのまま私は正樹に笑顔を向ける。



優しい正樹。私を心から愛してくれて絶対に幸せにすると誓ってくれた。



そんな彼を一番に想い大切にしなければいけないのに、私の心は遠巻きに見ている一人の男に支配されている。



第三者に気づかれないようにそちらを盗み見ればその男と視線が絡んだ。その熱い眼差しから視線が外せない。



ダメだ。誰かにこの想いを知られてはいけない。




自分の心に蓋をし、私は目の前で執り行われている結婚式に集中することにした。