大工さんに恋していいですか?おまけ追加中

羽菜side

…手渡された袋を握りしめたまま、駅に向かい、電車に乗った。

席は空いていて、私は出口に近い座席に腰かけた。

…この前のお礼だと言っていた。

たぶん、私がペットボトルを渡したそのお礼。

なんだか、申し訳なさが一杯になった。でも、それと同時に、

嬉しさも一杯になる。


・・・それに比例して、さっきの女性と、あの指輪の事も思い出され、

複雑な気持ちになる。


博さんの考えている事も、この行動も、全然理解が出来ない。

・・・そんな複雑な気持ちのまま、袋を開けた。

「・・・あ、可愛い」

自然とそんな声が漏れた。

だって、私が好きなデザインの髪留めだったから。

…これをどんな想いで、買ったのか、私にはわからない。

でも、きっとこんな物は、女性が入るような店なので、

恥ずかしかったに違いない。



「…ありがとう、博さん」

小さな声で呟いた。

…博さんへの想いは、絶たなきゃいけない、恋人がいるなら、

奪っちゃいけない。そう思った。・・・でも。

この想いは、止められそうにない。

片思いなら、博さんの事を想ってもいいよね?

博さんや、その彼女を傷つけなければ、・・・いいよね?

・・・無意識に、髪留めを抱きしめていた。


< 23 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop