私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
◇第6章:海男と宇ノ島での2日間
 新しく発行する季刊の一部を担当することになり、その下調べでK県F市にきて海に落ちるというハプニングに見舞われて何とか助かったけど、私を助けてくれた海斗さんとヒデ子婆ちゃんの家に一泊することになっちゃった。

 私は助けてくれた海斗さんと一緒にご飯を作ることになり、台所に入るとシンプルな木造の食器棚、ガス台は2口コンロ、洗面台はやや狭めで、どこか懐かしさを感じる。

 海斗さんは冷蔵庫から青魚を取り出しすと、慣れた手つきで包丁を使ってお刺身を作ったので、私は普段は簡単な料理しか作らないから男性で料理が上手なのってなんだかいいな。

「突っ立てないで、あそこの食器棚から茶碗を和室に運んで」
「あ、はい」

 私は食器棚の扉を開けると大小様々な食器が置かれていて、人数分のお茶碗を手にとって和室に運び、そして台所に戻ると美味しい磯の香りが漂っていて、海斗さんはお味噌汁をお椀によそっていた。

 お刺身以外にも煮付けに揚げ物などが食器に盛り付けられていて、お椀には都内じゃみれないくらい浅蜊の大きいのが入っているし、なんて豪華な料理なんだろう。

「こんなに大きな浅蜊は、都内じゃみれないです」
「普段は地元優先の店に卸してるから、都内は契約してない」
「そうなんですか?」
「都内に店に構える料理人が足を運んでくるけれど、俺たち漁師に無茶を言って値段を交渉してくるから、俺は都内の料亭への契約をしないようにしている」

 海斗さんって漁師なんだ…、漁師ってもうちょっと大柄な体で豪快なイメージがあるけれど、海斗さんはそんな風には見えないな。
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