仕方ないから、取っておきの情報を教えてあげることにした。
これを聞いたら、さすがの櫂君もぶっ飛んで一緒に喜んでくれるよね。

「それでね。ヒールで足が痛くて歩けなくなったら。望月さんがお姫様抱っこをしてくれたんだよ。凄くない? もう、夢心地ですよぉ」

むふふふふ。
思い出したら、またニヤニヤが止まらなくなって来た。

緩んだしまりのない顔のまま、櫂君も一緒に喜んでくれるだろうと様子を見ていたら、何故だかスマホを握り締めたまま、完全にフリーズしてしまった。

「あれ? かいくーん?」

櫂君の顔の前で手を振ってみても、瞳孔が開いたみたいに魂が抜けている。

「驚きすぎて、言葉もない? だよね。私だってびっくりしたんだから。一応ね、悪いなと思って断るには断ったんだよ。けどね、望月さんがゴチャゴチャ言ってないでサッサとしろってな感じだったものだから、つい甘えてしまいましたのですよ。むふふふ」

思い出し笑いをしていると、櫂君が不意に俯いてしまった。
そうして、絞り出すような苦しげな声を出したんだ。

「なんなんですか……望月さんて……何考えてるんですかっ」
「へ?」
「ストーカーなんて菜穂子さんのこと言ってたくせに……なんなんですかっ」

暗く沈んだ声を床に向けて零す櫂君は、望月さんに怒っている様子だ。
握ったこぶしを床について、何かを溜め込んだみたいに体が小刻みに震えている。

「どしたの? 何で櫂君が怒るの?」

様子がおかしくなった櫂君に、私はちょっと動揺してしまう。
お姫様抱っこの話で盛り上がれると思ったのに、まったくそなん雰囲気にならない。

櫂君の怒っているような様子に不安になってきても、私はどうすればいいのかわからなかった。
それと同時に更に熱も上がり始めているのか、脳内のクラクラが二倍増しくらいになってきていた。