もう一度目を覚ましたら、随分と体が楽になっていた。
櫂君がくれた薬が効いたみたいだ。

首を巡らせると、櫂君がベッドに寄りかかって座っていた。
声をかけようとしたけれど、静かな寝息が聞こえてきたのでやめておいた。

物件の話を聞きにきただけなのに、櫂君には悪いことをしてしまったな。
わざわざ家まで来て、看病までさせちゃったね。

「ごめんね……」

小さく零した声に櫂君がビクリと反応して起きてしまった。
目を擦り、寝ている私を振り向く。

「どうですか?」

私の頬にそっと手を添えると、ほっとした顔をする。
その表情に、何故だか私もほっとした。

「ありがと。もう、平気だと思うよ」

今度はちゃんと声になり、櫂君のほっとした顔に向かって笑いかける。

「駄目ですよ。飲んだのはただの解熱剤ですから。薬が切れればまた熱が上がってくると思います」

そう言って、結局、その直ぐあと。
櫂君が呼んだタクシーに乗って、私は救急の病院へと連れて行かれた。

「薬も貰えたし、これで良くなりますよ」
「こんな時間まで、ごめんね」

夜も遅い時間になって、私は再び横になった自宅のベッドから櫂君に謝った。

「今度、美味しいお酒。おごってくださいね」
「もちろんだよ」

「じゃあ、僕そろそろ帰りますね。あ、キッチンにおかゆ作ってありますから。食欲が出たら温めなおして食べてください。薬、ちゃんと飲んでくださいよ」
「うん。ありがと」

玄関先まで見送ろうとしたら、やんわり断られた。
優しく片手を挙げて出て行く櫂君の背中を見送って、私はまた眠りについた。