桜まち 


「ていうか。何で僕までこんなにことにつき合わされなくちゃいけないんですか」

不満顔の櫂君は、うちのテーブルにさっき買った惣菜や缶ビールを袋から丁寧に出していく。

「だって。一人だとストーカーっぽいけど、二人だったら、宴でいける気がしない?」
「宴って。隣の物音聞くために僕を連れ込んでも、やってる行為はどう取り繕ってもストーカーですよ」

「そうなの?」
「そうですよ」

せっかく色々と買い込んだのにな。

私は、並ぶ沢山のお惣菜を眺めながら腕を組む。

櫂君は、呆れた溜息とともに立ち上がると、お皿借りますよ。と甲斐甲斐しく惣菜をお皿に移してレンジでチンしてくれるらしい。
別にコンビニで入れてもらった袋のままでもよかったんだけど。
それをしないのが、気遣いばっちりの櫂君なのですよね。
さすがです。

「さっき通った時は、まだ電気は点いてなかったよね。帰りは、遅いのかな?」

キッチンで準備している櫂君に話しかけると、だからぁ。と怒ったようなあきれたような顔をされた。

だけど、気になっちゃうんだもん。
好きなんだからしょうがなくない?

櫂君がレンチンしてくれたお惣菜のメンチカツを肴に、ビールを煽った。

「おいしいっ」

メンチのうまさとビールの炭酸にきゅっと顔をしかめて静かに堪能していると、櫂君もビールを飲んで大きな声でうまいっと声を上げた。

「声が大きいよ、櫂君。静かにしてないと、帰ってきた音に気づけないじゃん」
「あのですねぇ。本当に、そういうのはやめたほうがいいって思うんですけど、僕」

部屋ではテレビも点けず、音楽さえ流していない。
静かにしていないと、大事な物音を聞き逃してしまうからね。


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