「どうぞ、適当にお座りください」

寒さに凍えていた望月さんは、靴を脱ぐとズカズカと部屋に上がり、ストンと床に胡坐をかいた。
エアコンは効いていて暖かいはずだけれど、それでもずっと外に居たから、体の心は冷え切っていることだろう。
なので、とりあえず温かい紅茶を入れてみる。
ティーパックのやつだから、直ぐに用意ができた。

「よかったらどうぞ。睡眠薬とかけして入っていませんので」

念の為にと言い添えたのが余計に悪かったのか、手を伸ばしかけた望月さんがその手を引っ込めてしまった。

あのね……。
大体、そうそう都合よく睡眠薬なんて、持ってませんて。
どれだけ信用がないのでしょうか。

がっくりときながらも、そういえばと思い出す。

「うどん。食べます?」

一人分しかないけれど、と訊ねると、今度は首を縦に振った。

紅茶には警戒したのに、うどんには警戒しないというのがよくわからない。
お腹が空いているのかも。
そして、この望月さんという人は、意外と遠慮をするということを知らない人なのかもしれない。

こんな時櫂君なら、いえいえお構いなく。とか。
寧ろ、じゃあ僕が何か作りますよ。なんて冷蔵庫の中にある物でチャッチャと料理を作ってくれそうな気がする。
まぁ、櫂君の場合、気が利きすぎるところがあるから特別よね。

あ、そういえば。
今、何時だろう?

二一時に来ると言っていた櫂君だけれど、時間を確認するととっくに二一時は過ぎていた。

スマホを見てみると、LINEで連絡が来ていた。
どうやら、もうちょっと遅れるらしい。
それでも絶対に行くので待っててください。と書かれている。

無理しなくてもいいのに。