カットハウスやわた
彼氏にさよならを
家に帰ると、すぐにシャワーを浴びた。シャワーを止めても、長い髪をつたって足元に零れ落ちる滴たち。


『綺麗な髪だね』


正樹は、抱きしめると必ず私にそう言ってくれた。私にだけ……そう思っていたけれど、きっと他の女にも同じことを言っていたんだ。


シャワーの滴に、私の涙が一緒になった。悔しいから、泣くのは今だけ。風呂場を出たら、いつもの私に戻るから。


「ううっ……うっ……」


私は風呂場の床に座り込んで、今後一年分くらいの涙を流した。もう当分、恋なんて、しない。


こんなに惨めで、こんなに悔しい涙は、流したくないから。



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