四月の魚 〜溺れる恋心〜【短編】
四月の魚 ~溺れる恋心~

4月1日。

今日はエイプリルフール。


今から人生で一番大きな嘘をつく。


その決意のもと、あたしは人気の少ない公園で呼び出した男と対峙していた。



「好きです、付き合って下さい!」


彼の顔を直視できなくて、おじぎをするようにしながらあたしは大きな声で伝えた。

この返事は聞かなくてもわかってる。


彼はこう言うはず…。

『ごめん』と。


しかし、聞こえてきたのは、

「こちらこそよろしく」という穏やかな声だった。



「え?」



地面を睨んでいた顔をあげて、彼を見る。


こげ茶色の髪に男性にしては白い肌、羨ましくなるくらいに大きな瞳に長い睫、そして、高い鼻。

日本人にしては全体的に色素が薄く、

彫の深い顔立ちがまるでハーフのように、それも王子様か何かに見える彼、朝倉倫(あさくら りん)は綺麗な顔で微笑んでいた。
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