四月の魚 〜溺れる恋心〜【短編】

あたし達はしばし見つめ合っていた。


やがて、彼が動く。

その手があたしに伸びる。


呆然としていて、そのことに反応が遅れた。


彼は何を思ったのか、手をあたしの肩に置くと、頬にキスを落とした。


暖かい感触に、背筋が凍る。

頬を中心にゾワゾワと足の先まで駆け巡る。

そのすぐ後には、自分の絶叫が公園に響き渡っていた。



「いやーーーーー!!!!!!」



あたしの顔は真っ赤になっていた。

恥ずかしいの赤ではない。


蕁麻疹が出たのだ。


鮎川 春希(あゆかわ はるき)、16歳。

あたし、イケメンアレルギーなのです…。


そして、王子様みたいな容姿の朝倉くんは誰がどう見てもイケメンだった。
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