解けない恋の魔法
 隣の部屋でドレスを脱いで、着て来たスーツに着替え終わると再びアトリエ部屋に戻った。
 てっきりまだ操さんがいるものだと思っていたのに、その姿は既になく……。

「あれ? 操さん、帰られたんですか?」

「うん。僕が振り込んだ金額が違うとかなんとか喚いて、帰って行ったよ」

 ……操さんの用事は短時間で済んだみたいだ。
 操さんがまだいるのなら、私は自分の用事も済んだし、挨拶だけして帰ろうと思っていたのに。

「操が働いてる会社、海外の輸入雑貨を扱ってるんだ。この前久しぶりに会ったらいろいろ仕入れさせられちゃってさ。で、その代金を振り込んだんだけど金額が間違ってるって、あの剣幕だよ。細かいこと言いすぎだよねー」

「いや……全然細かくないですよ。振込み金額が間違っていれば指摘されるのは当たり前です」

 至極当然だと私が素で言えば、冗談だよとケラケラと宮田さんが笑う。


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