解けない恋の魔法
「靴、用意しといたよ」

 部屋に入るなり、満面の笑みで宮田さんが私にパンプスを手渡す。
 色は大人しめなシャンパンゴールドで、ピンヒール。
 つま先から外側のサイドにかけて、ストーンが上品にあしらわれているデザインだ。
 早速履いてみるように言われ、真新しいその綺麗な代物にそっと足を入れてみた。

「どう? 足、痛い?」

「いえ。大丈夫です」

「そう、良かった」

「ありがとうございます。素敵な靴を準備していただいて」

 お礼を言うと、「どういたしまして」と宮田さんが余裕めかして笑った。

「じゃ、僕も隣の部屋で着替えるから、朝日奈さんもドレスに着替えてね」

 意気揚々……とでも言うんだろうか。
 宮田さんがなんだか楽しそうに、この前試着したドレスを私の両手に乗せて、そのままひらひらと手を振って部屋を出て行った。


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