解けない恋の魔法
 一瞬で、あの人だとわかったのに……
 もうひとりの私が、そんなはずはないとそれを打ち消す。
 ……きっと違う。似てるだけで別人だ。

「朝日奈さん? どうしたの?」

 じっと一点を見つめたままの私に、隣に居た宮田さんが不思議そうに声をかける。
 そして、私が見ている同じ方向に、なにがあるのだろうと視線を移した。

「……あ、岳だ」

 隣でそう呟いた宮田さんに、驚いて今度は私が宮田さんを見上げる。
 彼はいつも通り人懐っこい笑みを浮かべていて、視線の方向は変えないままだ。

「おーい、岳ー!」

 軽く手を上げて、その視線の先にいる誰かに無邪気に合図を送る。


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