解けない恋の魔法
 そのまま通話を切り、私はあわててロッカールームを後にした。
 遅く感じるエレベーターに乗り込み、会社の外に飛び出すと、一台の車がハザードをつけて停まっていることに気づく。

 助手席側のドアを背にして立つ宮田さんの姿があった。
 ポケットに手を入れて佇む姿が、車を背景にしているせいか、とても様になっている。

 そんなことよりも。たしかに会社に迎えに来るとは言っていたけれど……

「い、いったいいつから居たんですか?!」

「はは。息が切れてるね」

 それは、エレベーターを降りたあとダッシュで走って来たからです。

「私のことはいいんです!」

「えーっと……着いたのは1時間くらい前、かな」

「そんな時間からここに居たんですか?!」

「うん。終わったら電話くれる約束だったし。 だからここで待ってた。とりあえず車に乗って?」

 そう言って、彼が背にしていた助手席のドアを開ける。

 ずいぶんと待たせたのに、不機嫌じゃないんだ……
 などと思いながら、私は促されるまま助手席に乗り込むとドアを閉められた。


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