解けない恋の魔法
 最悪、私の企画が最終的に通らなかったとしても、新作のドレスは衣装部に入荷することになる。
 もしそうなったとしても、私が携わったドレスなのだからそれだけでも個人的にはすごくうれしい。

「実際に衣装が出来上がったら、モデルを使って新しいパンフレットを作ろう。撮影の予算は俺が会社に掛け合ってやるから」

「ありがとうございます」

「とにかくお前は最上さんのとこに行って打ち合わせしてこい」

「はいっ」

「女性なんだから甘いものとか好きそうだよな。どこかでスイーツの手土産でも買って行って、彼女の機嫌を取っとけよ?」

「……そう、ですね」

 最後の最後に、顔が引きつってしまった。
 この企画に意気込みすぎて、今は忘れてた。……最上梨子の秘密のことを。

 誰にも言わないと約束したのだから、もちろんそれは直属の上司である袴田部長にも絶対に言えない。

 最上梨子が実は男だったからと言って、会社に損失を与えるわけでもないし。
 別に黙っていても、どうってことはない。

 だけど今の引きつった顔……部長にバレていないだろうか。
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