解けない恋の魔法
ドレスの魔法
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「緋雪! 今週の日曜日、空いてる?」

 お昼休みに休憩スペースでコンビニの鮭おにぎりを頬張っていたら、麗子さんから声をかけられた。

「今週、なにかあるんですか?」

「うん。友達と行こうとしてたライブがあるんだけど。その友達、行けなくなっちゃってね。チケットがもったいないから一緒に行こうよ!」

 テンションの高い麗子さんを前に、眉尻を下げてペコリと頭を下げる。

「すみません、今週はちょっと用事があるんですよ。本当は麗子さんとライブに行きたいんですけど……」

 麗子さんと出かけるほうがどんなに良いか。
 どんなに楽しくて、気が楽なことか。

 聞けば、それは今人気のバンドのライブだった。
 ストレス解消にはちょうどいいのだけど。

「なんだぁ、緋雪もダメかぁ」

「ごめんなさい」

 シュンと肩を落として謝ると、麗子さんがクイっと口の端を上げて意味ありげに微笑んだ。


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