秘めた恋

馴れ馴れしい男、現る



12:00になり、お昼休憩のチャイムが鳴った。

待ってましたーとばかりに私は鞄を持ち、事務所を後にした。
私は入りたてでそこまで忙しくはないため、1時間まったりと
休憩時間を有効活用出来るがデザインGの高梨さんや
PL(プロジェクトリーダー)の杉並さんは休憩中も
仕事をしてるみたい。

するとミーティングが終わり、会議室からぞろぞろと
出てくる人達に「お疲れ様です。」と挨拶を交わすと
その中に混じっていたある人に近づいて声をかけた。

「古橋さん、お疲れ様です。」

「あ、お疲れ。」

同日にこの会社に入ったこともあり、(私の中では)
彼に親近感を感じていた。

「どうでした?」

「まぁ、ぼちぼちだな。前回、副社長が考案した『極』という万年筆は
男性購入率が圧倒的に多かったから、今度は女性向け商品を狙ってるって
寸法だ」

「ほ~」

っと偉そうに感心してみる。

「女性向けとなると古橋さん、難しそうじゃないんですか?」

「いや、そうでもないよ。女友達多いし、色々聞けるから。」

女友達が多いかぁ。遊び相手が多いの間違いでは?
と勝手に被害妄想で凹んでみる。

「あぁ、古橋さんってモテそうですもんね。彼女がいても当たり前かぁ」
なんてあからさまに落ち込んだ様子でぼやいてみると

「まぁ、モテるかもな。この会社に入ってから何度か声がかかったし」

ぐさ・・・

「だけど、今は彼女はいないよ。」

そう言うと、仕事がまだ残ってると言って彼はその場を後にした。
私はその後姿を手を振って見送る。
誰よりも背が高くて黒のスーツ姿がまた似合う。

はぁ・・・とため息を漏らす。

つれないようでいて、彼女がいないアピールも自然としてくる。
仲が良い様でいて、恋愛対象と見られていないような
何を考えてるのか全く分からない。

はぁ、と重いため息を漏らすと私はエレベーターホールに向かい、オフィスビルを後にした。
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