秘めた恋

予感



事務所に戻ると古橋さんと女性社員が話しているのが目に入った。
浅利さんという可愛らしい女性で社内でも浅利さんを狙っている男性社員は
多いと水木さんから聞いたことがある。

楽しそうに笑い合う二人を見て、内心胸が痛かった。
私は一呼吸置くと二人の中に割って入って行った。

「ねぇねぇ、聞いてくださいよー」

一瞬、二人は驚きのあまり仰け反り、浅利さんに関しては
何、この人、というような目つきで私を見ていた。

「さっき、馴れ馴れしい営業の人がいて・・・」

その時だった。

「古橋君」

後ろから彼の名を呼ぶ落ち着いたトーンの女性の声が聞こえた。

振り返るとカツカツと音を鳴らし、モデルさんのような
ピシッとした姿勢と身のこなしで高梨さんがこちらに向かって歩いてきた。

「なんですか?」

古橋さんは先ほどとは違い、やや不機嫌そうな顔をして彼女を見下ろした。

「副社長が呼んでる。」

そう言うと、反応したのは浅利さんだった。

「え!?あの副社長と会ったんですか!?超羨ましい~」

両手をグーにして口元に持ってくると、キャーという
黄色い声を上げながらぴょんぴょん飛び跳ねた。



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