秘めた恋

オオハシカズマ



ベンツを数分走らせると、車は表参道に着き、彼は執事に待つように伝えると
私の腕を掴み、また引っ張るようにして「こっちだ。」と誘導した。

ブランド物の店に入るといきなり「どれが欲しい」と聞いてきた。
「へっ!?」

驚いていると「好きなもの買ってやる。」と言ってきた。

「な、何言ってるんですか?」

「友達のよしみだ。落ち込んでんだったら買い物が一番だよ。」

と訳の分からないことを言ってきた。

「で、でもこんな高級なもの・・・・。」

私はディスプレイに飾ってあるダイヤのついたきらびやかな腕時計の
値段を見て驚愕した。

数百万もするものを軽く買ってやるとか言える男をこれまでに見たことがない。

「どれが良い?」

「い、いえ、どれも結構です。見ただけで満足ですから・・・。」

「値段にびびってんのか。これくらいで」と笑いながら言う彼の神経が信じられなかった。

「あ、あの。と、とにかく出ましょう。」

私は彼の腕を掴み、店から出ると「わ、私、食べ物が良いです。」と
言った。

彼にブランド店に近づいて欲しくなかったからそう言うと
彼は分かったと言って楽しそうに笑った。

すると「もしかして和馬君?」と綺麗で色っぽい女性の声がして
私たちはその方を振り向いた。
< 55 / 175 >

この作品をシェア

pagetop