狂々にして仄暗く
八、憎むならば殺しましょう

木こりたる夫は、その日も妻を家に残し、山へ行く。

何ら変わりない毎日を迎えた筈が、帰ってきた夫を迎えたのは、見るも無残な妻の死体であった。

盗賊にでも襲われたのであろう。三日三晩泣き続けた夫は、盗賊に復讐を誓う。

愛用の斧を持ち、妻を殺した盗賊たちを夫は殺した。

しかしながら、愛する妻を殺された憎悪は未だに残ったまま。憎しみのままに動く夫は、次に盗賊たちの親を手に掛けた。

妻を殺した奴が悪い、妻を殺すような奴を産んだ奴が憎い、そうして、そんな奴を産む可能性がある奴らを産んだのがーー愛用の斧が折れてもなお、夫が殺さねばならない者は尽きなかった。

幾多の人を殺そうが、夫の憎悪は消えない。

何故だと一人、妻の遺骨を手にしながら、夫は嘆く。

そこで気付いたのだ。

「一番憎いのは、僕だ」

妻と結婚した自分が悪い、この家に住まわせた自分がいけない、一人にさせてしまった自分が憎い。

僕と出会ってしまったばかりに、彼女は死んでしまったーー


妻の遺骨で自身の喉を裂いた瞬間、夫は満面の笑みを浮かべるのだった。

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