行きたい場所が思い浮かばなかった渚は、コーヒーショップに連れて来られた。二人用のテーブルに向かい合って座ることになり、ここで手が離れた。

自然に離れることが出来て、安堵のため息をつく。そんな渚を見て、峻は口元を緩めた。


「紺野が泣くほど、感動する女だとは思わなかったな。だけど、よく考えたらさ、いつも感情的になっているものな…」


「よく考えなくて、いいです…」


泣く姿を見られたこと自体が恥ずかしいのに、普段の渚を思い出されるなんて、もっと恥ずかしかった。

向かいに座る峻を真っ直ぐに見ることが出来なくて、視線をテーブルに落とした。


しかし、そこにはコーヒーカップに手を添えていた峻の右手があった。それは、さっきまで渚の手と繋がっていた手である。


理想の手がすぐそこにある。薄暗い映画館で見た時よりもはっきりと見える。




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