最悪から最愛へ
峻の手は、指が長くて、少し節が太いけど細い。何よりも形が良い。渚は、見始めたら目が離せなくなった。

あの手に触られたら…


「興味を持つのは、この手だけか?」


峻が、指を少し動かしたので、意識を手から離そうとする。


「いや、あの…まあ、良い形だなと思って」


「触り心地はどうだった?」


「良かったですけど…」


手を見ることは出来ても、顔を見ることは出来ない。渚は、依然として手を見たままだ。


「紺野の手も触り心地が良かったよ」


「えっ?」


渚は、突然自分のことを言われて、顔をあげた。峻は、やっと見てくれた渚に笑う。ずっと渚を見ていたのだ。

だから、渚が見てくれたことが嬉しくなった。


「紺野は細いけどさ、あちこち触り心地が良さそうだよな」


「はい?あちこちって…や、どこ見てるんですか?」


峻の視線が胸にあったことに気付いて、渚は頬を赤くして、胸を隠すように腕を組む。
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