恋のはじまりは曖昧で

営業のフロアへ戻った早々、原田部長に声をかけられた。

「高瀬さん、悪いんだけどこれ二十部コピーして一部ずつまとめておいて。明日の営業会議で使うから」

「はい、分かりました」

数枚の紙を手渡され、そのままコピー機へ足を向けた。
コピーし終わると、ホッチキスで留めクリアファイルに入れていく。

それが済んだら、資料作りのお手伝い。
得意先ごとに材料の出荷数量を表にしてまとめておくように頼まれたので、エクセルを起動させた。
数字と格闘した末、出来上がったデータを保存しプリントアウトする。

間違いがないか最終確認し、部長に渡した。
自分の席に戻りながら壁にかかっている時計を見ると十八時を回っていた。

今週は月の半ばということもあり、残業する営業事務の人は少ない。

“帰れる時は、さっさと帰る”がモットーの片岡さんたち。
当然のように定時になったら帰って行った。
営業事務で残っているのは私と弥生さんだけだった。

片岡さんや木原さんは子供がいるから、極力残業はしないようにしているみたいだ。
それを三浦さんたちも理解しているから、その二人が遅くなりそうだったら仕事を分担して受け持ったりしている。

お互いにフォローしあっている関係って素敵だなと改めて思う。
私も少しでもいいから役に立ちたいけど、まだまだそのレベルには達していない。
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