恋のはじまりは曖昧で
「オッケー!いい写真が撮れたよ」
カメラマンをしていた近藤さんが撮影終了と声をかけた。
「ご迷惑をおかけしてすみません。あの、大丈夫ですか?」
「あぁ、可愛く笑っている写真が撮れたよ。また、USBに保存して浅村くんと高瀬さんに届けます」
「いいんですか?あ、でもコイツとツーショットはいらないかも」
「何よ!それはこっちのセリフだよ」
ホント失礼しちゃう。
私だって浅村くんと一緒になんて写りたくなかったよ!
「あはは、営業部のフレッシュマンコンビは仲がいいね」
「よくないです!」
浅村くんと声がハモり、「息ピッタリだね」なんて笑われた。
とまぁ、こんなことがあり、昨日社内報が家に郵送されてきた。
それを見た薫に絶賛からかわれ中。
「紗彩のページのところだけ切り取って、」
「いや、しなくていいから!」
言い終わる前に言葉を遮った。
そんなこっぱずかしいこと、冗談でも勘弁だ。
「じゃ、またね」
薫と別れ、営業部のフロアへ向かった。
席に座ってパソコンを起動させていたら、勢いよく浅村くんがフロアに駆け込んできた。
みんなの視線が一気に集中する。
「朝から騒がしいな。社内は走るなよ」
「すみません。でも、怖くて」
「は、怖いって何が?」
加藤さんに注意され浅村くんは謝りながらも変なことを言う。