恋のはじまりは曖昧で

「オッケー!いい写真が撮れたよ」

カメラマンをしていた近藤さんが撮影終了と声をかけた。

「ご迷惑をおかけしてすみません。あの、大丈夫ですか?」

「あぁ、可愛く笑っている写真が撮れたよ。また、USBに保存して浅村くんと高瀬さんに届けます」

「いいんですか?あ、でもコイツとツーショットはいらないかも」

「何よ!それはこっちのセリフだよ」

ホント失礼しちゃう。
私だって浅村くんと一緒になんて写りたくなかったよ!

「あはは、営業部のフレッシュマンコンビは仲がいいね」

「よくないです!」

浅村くんと声がハモり、「息ピッタリだね」なんて笑われた。
とまぁ、こんなことがあり、昨日社内報が家に郵送されてきた。
それを見た薫に絶賛からかわれ中。

「紗彩のページのところだけ切り取って、」

「いや、しなくていいから!」

言い終わる前に言葉を遮った。
そんなこっぱずかしいこと、冗談でも勘弁だ。

「じゃ、またね」

薫と別れ、営業部のフロアへ向かった。
席に座ってパソコンを起動させていたら、勢いよく浅村くんがフロアに駆け込んできた。
みんなの視線が一気に集中する。

「朝から騒がしいな。社内は走るなよ」

「すみません。でも、怖くて」

「は、怖いって何が?」

加藤さんに注意され浅村くんは謝りながらも変なことを言う。
< 195 / 270 >

この作品をシェア

pagetop