恋のはじまりは曖昧で

「ねぇねぇ、ところでもう仕事は慣れた?」

「どうかな。まだ簡単な仕事しかやってないから分からないけど、言われたことはちゃんとやってるつもり」

コピーや資料の整理、電話対応に加え、請求書や見積書の作成、伝票処理の仕方など覚えることがたくさんある。
今はまだ雑用が多いけど、ゆくゆくは営業の人のサポートに回るからと営業部長から言われ、それに向けて日々勉強中だ。

「そうなの!最初は何も分からないから言われたことをやらなきゃって必死なんだよね。私もさぁ、教えてもらうことがてんこ盛りで頭がパンクしそう」

「あー、それ同感。私も覚えなきゃいけないことがたくさんあって自分のことで精一杯」

「そういえば、営業は浅村くんがいるよね」

「うん、いるよ」

「浅村くん、年上のお姉さま方に人気らしいよ」

「へぇ、そうなんだ」

営業には同期入社の浅村陸という男性がいる。
真っ黒なサラサラヘアにクリッとした印象的な大きな瞳の“愛されワンコ系”みたいな男で年上の女性からモテそうな感じ。

学生時代はかなり明るい色に染めていたらしいけど、就活の時に黒に染め直したと言っていた。

マリン系の香水をつけていて、その香りの雰囲気から浅村くんにピッタリな気がする。
明るくて人懐こく、物怖じせずにハキハキと話せるから営業職には向いてるんだろう。

すごく話しやすいし、男友達って感じだ。
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