恋のはじまりは曖昧で

「しゅに……」

堪らず名前を呼ぼうとしたら、人差し指を私の唇へ押し付ける。

「こんな時に何て呼べばいいか、分かるよな?」

王子様フェイスで色気たっぷりにそんなことを言う。
その顔に見惚れていた私は自然と名前を呼ぶ。

「浩介さん……」

目を細めて満足そうに笑うと、唇や額、頬にキスの雨を降らす。

着ていた服を脱がされた。
お風呂上がりだったので、ブラジャーなんてつけていなくて、あっという間に一糸まとわぬ姿になる。

何度経験しても恥ずかしくて身を捩りたくなる。
だけど、浩介さんはそれを許してくれなくて。

「綺麗なんだから隠すなよ」

そう言って私の素肌に口づける。
浩介さんが触れたところすべてが熱を帯び、思わず甘い吐息が漏れる。
私の身体を指先や唇で優しく丁寧に愛撫され、自然と恥ずかしさより快感の方が勝っていく。

「紗彩」

少し掠れた声で私の名前を呼び、浩介さんの熱が体内に入ってきた。
強烈な圧迫感に身体がのけぞり、労わるように額にキスをしてくれた。
心も身体もひとつに溶け合っているのを実感する。
熱い痺れが身体中に駆け巡り、一気に高みへと押し上げられた。

幸せな気持ちに満たされ、お互いの鼓動と温度を感じながら抱きしめ合った。
< 264 / 270 >

この作品をシェア

pagetop