恋のはじまりは曖昧で
しばらくして、打ち合わせを終えた部長たちが会議室から出てきた。
すぐさま私は椅子から立ち上がり、部長の元へ向かう。
「原田部長、九時過ぎに三田村建設の権藤さんからお電話があり、折り返し携帯の方へ電話して欲しいとのことです」
「あぁ、権藤さんね」
「それで連絡先を聞いたんですけど、原田部長は知っていると言われて……」
「知ってるから大丈夫だよ。ありがと」
軽く頭を下げ、給湯室に行きお盆を手に会議室へ向かった。
まだ誰か残っているのか人の気配がする。
そっと覗いてみると倉井さんが椅子を移動させていた。
「すみません、倉井さん。後は私がやります」
部屋の片付けをしてくれていたみたいだ。
倉井さんは真面目ですごくいい人というのが、言動から滲み出ている。
「そう?じゃあ、あとはお願いするね」
「はい」
コーヒーカップをお盆にのせ、換気扇を回す。
空気の入れ替えの為、窓も少し開けて電気を消した。
給湯室でコーヒーカップを洗い、食器乾燥機に入れて一段落。
自分の仕事に取り掛かる。
「お疲れさまです。本社の高瀬ですけど、島村さんいますか?」
『お疲れさまです、島村です』
私が電話をしたのは倉庫運輸部。
通称、運輸部。
私が今いる建物が本社になり、運輸部は別の場所にあり、一度、部長に連れて行ってもらったことがある。