恋のはじまりは曖昧で
「それと、これ。指定請求書で必着もあるから気を付けてね」
伝票の得意先の名前のところに赤丸がついてあった。
「はい。分かりました」
「じゃ、よろしく頼むわね」
片岡さんはバタバタと営業のフロアを出て行った。
自分の担当の分と片岡さんの伝票を入力していく。
そろそろ来てるかな?とファックスのところに行くと待ち望んでいた出荷明細書が送られてきていた。
追い込みをかけていると、佐藤さんが私の元にやってきた。
「高瀬さん、今日当番だったよね?忙しいとこ申し訳ないけど、第三にコーヒー八つお願いしたいんだ。もう部長たちはお客さんと入っているから」
「分かりました。あの、お客さんは何人いらっしゃいますか?」
「四人だよ。うちは部長と課長、加藤さんと俺の四人」
「ありがとうございます。分かりました」
自分のやっていた仕事を中断し、給湯室に向かう。
一度にコーヒーカップ八つは運べないので二回に分けよう。
お客さんの分を先に準備し、ソーサーにカップとスプーン、ミルクと砂糖をのせて会議室まで運ぶ。
第三というのは二番目に広い会議室だ。
ノックをすると佐藤さんがドアを開けてくれ、テーブルにコーヒーを並べていく。
それが終わると給湯室に戻り、部長たちの分のコーヒーを運んだ。