恋のはじまりは曖昧で
「汗かいたし、さっぱりするために温泉に入ろうか」
「ですね。このまま行きましょう」
三浦さんと弥生さんの会話に疑問がわいた。
「え、このままですか?」
「何?紗彩はお風呂の用意、持ってきてないの?」
「はい」
よく見ると、三人とも準備万端とばかりに手に荷物を持っていた。
そういえば、部屋を出る時に私は手ぶらだったけど弥生さんの手には何か袋を持っていたような気がする。
そりゃあ、身体を動かしたら汗かくよね。
そこまで考えてなかった。
「出る時に言ってあげればよかったね」
弥生さんがごめんねと謝罪する。
「じゃ、私ら先に行ってるから取っておいで」
「分かりました」
三浦さんたちと別れて急いで部屋に戻り、バッグから下着類の入った袋を手に一階の大浴場を目指す。
エレベーターホールに行き、ちょうど開いたエレベーターに乗り込んで一階のボタンを押そうと思ったらすでにランプはついていた。
乗る時にエレベータの中に数人の人がいたのは気づいていた。
ジロジロ見るのは失礼だから俯き加減で乗ったから、誰がいたかは確認はしていなかった。
エレベーターの隅に寄り、邪魔にならないようにしていたら、不意にかけられた声にドキッとした。