君と夢見るエクスプレス
8. 曖昧な関係

月曜日の朝、気分は決まって低空飛行。駅へと向かう足取りが重く感じられるのは毎週のこと。



だけど、今日はさらに重いような気がする。足取りだけじゃなくて、気持ちまで。



それでも急がなくちゃ。
いつもより早く家を出たのは、一本早い電車に乗るため。それと理由はもうひとつ、橘さんと鉢合わせないため。



だって、同じ電車に乗るのは恥ずかしい。顔を合わせるのも、話をするのも、どちらにしろ恥ずかしいのに変わりはない。



もし橘さんと同じ電車に乗ったとして、先週の彼の失敗を覚えている人が居たら?



一緒に居る私まで恥ずかしくなるじゃない。
なんて言い聞かせるけど、本当に恥ずかしい理由はそれだけじゃない。



とにかく急がねば。
橘さんより早く電車に乗って、職場に着かなくちゃ。



速く歩くつもりで履いたローヒールのパンプス。久しぶりに履いたから踵が擦れて痛いけど、こんな所では止まれない。



滝野原駅に着くまでは止まるものか。


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