【短編】よわ虫kiss
3..Three Out


気付いた時には大和が隣にいた。


小学生の時は、登校班の班長する大和の後ろ姿を毎日眺めてた。


1年生の子を気づかいながらゆっくり歩く大和は、いつの間にか低学年に大人気になっちゃって、いっつも「くらえ、班長怪獣!」とか言われながら蹴られてた。


どさくさに紛れて一発蹴りを入れたら、大和に追いかけられて…

班のみんなで走りながら学校に行ったら、先生に怒られたっけ。


中学では、初めて大和に背を越されて…

「あれ?アヤそんなちびっこだったっけ?」なんてイヤミに笑った大和に頭にきて、何かの間違いだって保健室の先生に抗議した。

…今思うと恥ずかしいけど。


林間学校で、夜企画された班毎の胆だめし。

お化け役が脅かしすぎたせいで腰を抜かしたあたしを、大和はバカにしながらもおぶって部屋まで運んでくれた。


京都奈良に行った修学旅行では、同じところに行ってるのにわざわざあたしにお土産とか買ってきて…


しかも、鹿の小さいオブジェとかって超いらないもの買ってきてケンカになったっけ。


「せめて、あぶらとり紙とか使うもんにしてくれればよかったのにっ」


「ばぁか!思い出だろうが!

これ見る度に、アヤが鹿に囲まれて青い顔してるのを思いだ…ぷ…だめだ、アヤ、面白すぎる(笑)」


「うるさいっ

大和なんか、笑いすぎてベンチから転がり落ちたくせにっ」


そんな言い合いしたっけね。


だけど、結局大和は鹿に囲まれて動けなくなったあたしを助けてくれたし、あたしが汚れた制服を気にしてたら、自分の学ランを貸してくれた。

5月だったし、まだ絶対に寒かったのに…


大和は「ばぁか!気使ってんじゃねぇよ(笑)らしくもねぇ」ってあたしの頭をがしがし撫でた。

…で、そこからは軽い殴り合い。


…今思えばくだらないけど、ってゆうかいつ思ってもくだらないけど、大切な大和との思い出。


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