俺様編集長サマにLOVE NONSTOP!
俺様編集長サマ
「あっ、平瀬(ひらせ)おはよう」
「おはようございます、編集長。もしかして、また会社に泊まったんですか…?」
午前8時。
出勤者もまばらな時間に、わたしの上司である編集長、高垣亮平(たかがき りょうへい)は、無精髭を生やしたまま、休憩室から出てきたのだった。
「ああ。徹夜だよ。当たり前だろ?もうすぐVILLA(ヴィラ)の締め切りだってのに、帰るヤツらの気がしれないよ」
そう言って編集長は、嫌みたらしくわたしに視線を向ける。
どうやら、『気がしれないヤツら』に、わたしも入っているらしい。
「言っときますけど編集長、わたしはちゃんと自宅で仕事を仕上げてきました。呑気に帰ったわけじゃないですから」
「へいへい、分かったよ。じゃあ、後でその原稿を見せろよ?」
鼻で笑った編集長は、そのまま男子トイレへ消えていった。
次に会う時は、あの無精髭がなくなっているはずだ。
この光景は繁忙期の編集長の日課だから、よく分かる。
< 1 / 246 >