俺様編集長サマにLOVE NONSTOP!
最強新人は波乱の元
風で、かすかに聞こえる葉の擦れる音が唯一の音。
と言っても過言ではないくらいに、静かな旅館だ。
無事に御所温泉に着いたわたしたちは、車を降りると荷物を手に宿へ入った。
メイン通りから離れた場所にあるせいか、想像以上に静かなのだ。
「お待ちしていました。どうぞ、ごゆっくりしてくださいね」
女将の挨拶を受けると、さっそく部屋へ案内される。
シーズンオフだというのに、客室は満室だ。
わたしたちが案内された部屋は和室で、品のいい掛軸や花瓶が飾られている。
窓からは山の景色が一望出来て、自然に癒される思いだ。
「よし、さっそく仕事を始めるか」
編集長は座卓にノートパソコンを広げ、資料を置いた。
「はい…。それはそうとして、今夜はここに泊まるんですよね?」
「そうだよ。それがどうかしたか?」
「えっと…。この部屋は、わたしと編集長のどっちの部屋ですか?」
この部屋しか案内されてないんだけど、ちゃんともう一部屋あるのよね?
どう見ても、客室に空室はなかったけど…。
すると、編集長はわたしを真っ直ぐに見つめて固まったのだった。
「あ…。オレ、間違えた」