オトナになるまで待たないで

事件

テスト直前の土曜日。

もはやバイト先に来るのは、

早番の青木さん、

中番の私、

夜勤の安田くん、

そして店長だけだ。




ヤバい…。

ダルい…。



今日は土曜。

青木さんが臨時で働いている。

私も朝8時から、夜10時まで働く。



もっと大変なのが店長。

夜勤2人の穴を埋めつつ、

昼間は空きブースで仮眠と事務仕事。

5時になったらまた働き出して、ヒマを見てまた仮眠。

そしてまた夜勤…


「疲れてるだろうに、よくやるよ。前の川田店長より良いよ」

青木さんが言う。

「川田店長はさ、アタマの中がマリオンちゃんでいっぱいだもん」

「そうですねー」



マリオン…茉莉音と書く。


川田店長ご自慢の娘。



「店がどうなろうとマリオンが熱出せば早退。記念日は遅刻。誕生日は泊まりがけで夢の国だもん」

私も川田店長を見ていると、みっともないと思う。

そしてマリオンちゃんの事を考えると、ズルいと思う。

3歳の会ったこともない女の子をズルいと思ってしまう。

(いや、画像は大量に見せられたか…)



「私がコナシだから、そう思うのかもね」

青木さんがうつむく。


「誰だって思いますよ」

「うーん、可愛い!この子は最近すっかり可愛いくなっちゃって!」

「ああ~髪がぁ」

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