素顔のキスは残業後に
第9章 優しい記憶の中で




ものすごい速さで走って来たはずなのに

柏原さんは息を切らせることもなく余裕げな瞳を私に向ける。


そして穏やかな笑みを浮かべながら

私と向かい合う部長の間に入るように、静かに口を開いた。


「部長。これ以上会社の評判を落とす真似は、やめた方いいですよ」


「おっ、お前。柏原か!? なんだ、その格好は!!」


大袈裟ではなく思いっきり裏返った部長の声に、柏原さんはピクリと頬を引き攣らせる。

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