呉服屋の若旦那に恋しました

約束したんだ



≪一九九五 七月九日≫

未来が見えました。

衣都は、誰よりも、誰よりも、誰よりも、

誰よりも、

幸せになります。

俺が、幸せにしますー……



「おはよう、桜…」


竹林を抜けた静かな場所にいる彼女に、俺はかかさず毎朝挨拶をする。

2014年現在も、それは続いている。


「あら、志貴さんおはようさん」

「三鷹さん、おはようございます」

「今日も桜ちゃんに挨拶しに行かはったん?」

「はい、今日は快晴だし竹林の道を抜けるのが、凄く気持ちよかったですよ」

「ええなあ、私もたまにはいかんとなあ」



いつものコースでの早朝の犬の散歩がえり、家に入ろうとした寸前で、お得意様に偶然出くわした。

俺は軽く会釈をして、お得意様と別れた。

朝五時に起床して、20分散歩して、小さい時からかかさず毎日書いてる日記を、帰宅したら書く。

俺の日々のスケジュールはとても緻密だ。

帰宅したらすぐに朝食の用意をして、栄養素の完璧な献立を完ぺきに再現する。

衣都が起きる時間を計算して、彼女に似合う髪飾りを鏡台に置いてから、彼女を起こす。

最近の俺のタイムスケジュールは、そういうことになっている。

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